大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(う)2091号 判決

被告人 箕輪克彦

〔抄 録〕

原判示第一の事実に関し、被告人の所論は、被告人としては終始一貫被害者に危害を加える意思がなかった旨主張するものであり、弁護人の所論は、原判決は被告人らが飯田敏子に対し、図書館前において「襲いかかるような態度を示した」と認定し、さらに、守衛所付近において「掴みかかった」と認定したが、被告人らは右のような行為をしていないから、この点において原判決には明らかに判決に影響を及ぼすべき事実の誤認があるというのであり、また、原判決は、右各行為に、図書館前から守衛所付近に至る間の被告人らの追跡行為を加えた一連の行為を全体として捉えて、これを暴行にあたるとしているが、右の個々の行為はいずれも有形力の行使とはいえず暴行ではないから、それらを全体として考察し、一連の行為と捉えてみても暴行となるものではないのに、これを暴行と認定した原判決には明らかに判決に影響を及ぼすべき法令適用の誤りがある、というのである。しかし、原判決挙示の関係証拠によれば、原判示事実はすべてこれを優に認めることができ、右認定を動かすに足る証拠はない。すなわち、静岡大学図書館付近において、被告人が一度見失った飯田敏子を発見し、同女を革マル派の偵察者であると誤認し、同女を捕えて追及しようと企て、他一名の者とともに同女の乗車する自動車に走り寄って同女に襲いかかるような態度を示し、自動車を発車させて逃走する同女を、四名の者と共に同所から約四二〇メートル離れた同大学守衛所付近まで、普通乗用自動車に乗って追跡し、被告人において自動車から降りて右守衛所に逃げ込もうとした同女を走って追いかけ、背後から同女に掴みかかったことは、証拠上動かし難い事実であって、未だ同女の身体に触れた事実は認められないにしても、暴行罪における暴行は、人の身体に対する有形力の行使をいうのであって、その有形力は、必ずしも相手方の身体に触れることを要するものではなく、いやしくも社会通念上身体に対する実害発生の危険性が大であって、相手方に強い不安ないし精神的動揺を与えると認められるものであれば、それをもって足ると解すべきであるから、右被告人の一連の行為をもって同女の身体に対する不法な攻撃であると認め、社会通念上実害の発生する危険性が大きく、かつ、相手方に激しい精神的動揺を与える性質のものであるから、これを同女に対する暴行々為と解すべきであるとした原判決は正当であるといわなければならない。従って、原判決には各所論の主張するような事実誤認はもとより、法令適用の誤りもない。論旨はいずれも理由がない。

(小松 山崎 佐野)

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